食べないウナギ

チャオプラヤ川の側のテウェート通り。運河とつなぐこの小道に緑の市場が連なる。小道は行き止まりとなっていて、その奥は「in love」という川沿いのお洒落なレストランになっている。

植木を買うのなら質・量ともにこの通りがよい。ちなみに生花・切花なら、やはり川沿いのパックローン花市場となる。

タイの家庭では、鉢植え大小の植物が屋内・屋外を問わず育てられている。みんなこんな鉢植えをどこでかってくるのだろうとデパートやスーパーに併設するフラワーショップや観葉植物ショップを覗くも、高級インテリヤ商材なみの価格。仲間と食事をしに行って偶然この市場が見つかった。

周辺は、生鮮食料品の市場も含めた大きな市場があるようだが、この500メートル位の小道に集中して植木屋というか観葉植物などを集めた市場がある。

巨大なウイークエンドマーケットに重量のある植木を買いに行く忍耐も、スーパーで綺麗に着飾った植木鉢を買うセンスもないので、わかり易く植木屋がならんで、車で店先につけられるこの近辺が好きになった。

日本の盆栽に見立てた鉢植えや南国ならではの蓮やランの花、観葉植物も大小さまざまなものがならんでいる。緑の中を夕涼みがてら歩いていると普段からの忙しさや喧騒も少し安らぐ気になってくる。緑のもたらす癒やし効果なのであろうか。TVによく出ているスピリチュアルタレントが「花や植物は人間の悪い気を吸ってくれる。室内の花が早く枯れるのは、良くない気が充満しているからだ」と言っていただが、室内に生花や植木を置いておくと心なしかそんな効果があるような気がしないでもない。信心はなによりも、生き物を愛しむ気持ちが無くてはいけないのである。

そんなことを考えて市場をあるいていると端っこのお店のタライの中にうごめくものがゴソゴソ。覗いてみると11.5キロはありそうな大きなウナギであった。川の近くの市場なので魚を売っているのはめずらしくないが、こんなにも大きなウナギを発見するなんて。バンコクで活ウナギの店が繁盛している昨今。地場ものでこんなにも大きなウナギに出会うなんて。少し嬉しくなって店主にキロ幾らか聞いてみた。

100B」。信じられない安さである。

タイ料理ではどうやって食べるのか聞いてみた。「。。。」

あんまり食べないと言っているようである。食べないものを何故売っているのだろうと思っていたら。その横にカゴに入れられたスズメがちゅんちゅん目にはいった。

なーんだ。

寺のお参りで逃がすためのウナギやスズメであったのである。すぐ近くの川に放すのだそうだ。タイでは、生物を逃がす行為が功徳を積む行為として考えられている。

一攫千金を期待したウナギビジネスも浮世の水と流れ、やはり生物を愛しむ心を大事にしなさいということなのであった。帰りに大型の蓮を100Bでかって帰った。合唱。


この記事は、2002年~2015年に雑誌掲載されたものに、加筆修正をしたものです。記述内容が当時のものであり、現状と違う部分が含まれています。