タイに来たばかりの頃、週末市場に出かけた。ごったがえす場内と溢れる商品に咽かえり疲労困ぱいしてなにも買い物しないまま帰ってきた記憶がある。それから、ナイトバザールやチャトチャクと聞くともうそれだけでうんざり。疲れた気持ちになって遠ざけていた。どうせ安物しかないに違いないという思いとあれだけたくさんの品物から目的のものを探し出す苦労を考えるといやーちょっと行きたくないと思ってしまうのであった。
それがある日、雑貨屋の女の子と買出しに行くとあれよあれよいう間に、小物やアクセサリーや靴を買い込んでいくのである。「これなんか日本でかったら3000円なのよ」と10個1000円くらいで仕入れた小物をみている。1日で大量の商品を仕入れ、帰宅後ひとつひとつ吟味していく。
うまい具合に日本で売れると数倍の価格で商いできるらしい。どんなものも見る人が見れば、新しい価値がプラスされていくのだな~ということを知る。
子供の頃、押入れから出てきた壺や掛け軸がビックリするような高値で値付けされるテレビ番組を見た。そのあとに昔から床の間においてある掛け軸は価値があるのではと幼心に思い、親父に聞いたらじいさまがその祖先から譲りうけたものであると言う。だいたいそんものが怪しいのである。
その後、掛け軸もろとも家がなくなってしまい家移りしたところには、真新しい掛け軸が飾られてあった。温泉街で親父が購入したものらしい。
久しぶりに週末市場にでかけ、偶然、植木のコーナーに盆栽らしきものを発見した。きっと、日本の盆栽通の人が見たら「そんなのは、絶対盆栽じゃない!!認めん!」と怒ってしまいそうなものである。しかし盆栽を意識しているのは理解できる。とりあえず小ぶりなものの値段を聞くと「150B」中ぶりのもの「200B」 とてもデカイ手の込んでいるやつは「250B」。唸ってしまった。もともとの値段も安いが、一番立派なやつと植木に毛の生えたようなのが100B違い。農園風のおばちゃんになんでそんなに安くなるのか聞いてみた。
おばちゃんは「値段のつけ方がわからん」と一言。迷わず一番デカイ盆栽を購入した。
この記事は、2002年~2015年に雑誌掲載されたものに、加筆修正をしたものです。記述内容が当時のものであり、現状と違う部分が含まれています。